伝票については、前回のコラムとQ&Aでも伝票について少し解説しました。
今回は裁判利用での証拠能力について解説します。
伝票
(手書き伝票とポスシステムでは全く違う、さらに手書きの場合には金庫や鍵のかかる部屋かどうかや第三者管理かどうかも問われる。)
昔に伝票を証拠提出しても、一審の裁判でホストクラブ側が負けたことが何回かありました。
その共通の理由は「伝票には被告(客)の名前も(客の風俗の源氏名で書かれている場合が多い)書いておらず、どのようにでも作成することができる。」この「どのようにでも作成できる」の判断が影響した判例でした。ここの店舗は当時、伝票はすべて手書きで書いており、最後の会計さえも「支払い済み〇〇円 売掛〇〇円」と手書きでした。
最近のホストクラブは、ポスシステムで一度入力さえすれば、改ざんできない(不正防止機能、第三者の開発者会社しか編集できないまたはログ記録残した上で過去消去不可であり再発行表記の伝票のみ発行可等)ようになっているシステムが多いです。
判決出てすぐに控訴し、陳述書はもちろん、当事者尋問(ホスト)と証人尋問(内勤スタッフ)と(客の人証)が行われ、法廷で説明させました。
被告のほうは、一審から二審まで「よく覚えていません、そんなに飲んでいません」と最後まで言っていました。
さらにホストクラブ側は伝票の保管方法についても、すべての伝票は記録が改ざんできないよう(税務署が厳しいので)に鍵のかかる部屋の金庫に毎日収納し、さらにその鍵は内勤スタッフ1人しかもっていないことなどの真実を述べました。またホストクラブということもあり、水商売は、伝票の改ざんが発覚すれば、税務署調査がすぐに入り営業取消になりますので、そこまでリスクを犯すなど、ありえないということとさらにコンプライアンス全体についても述べました。
売掛(マイナス)を意図的にホストクラブが作ることはなく、本当に売掛(マイナス)があれば伝票を改ざんせずに、シンプルに担当したホスト(客と連帯して債務を負う)から回収するかまたはそれができなければ、不良債権処理(税金対策)すればよいことであり(ホストクラブによって異なる)伝票を改ざんするメリットがないこと等を説明し、結果は勝訴ともうひとつは裁判上の和解で終了しました。
覚書や裏書のサイン
「サインがないから払わない」と言って売掛を飛ぶ客はたくさんいますが、実際はなくとも伝票だけで大丈夫です。ただし東京簡易裁判所の裁判官で「サインがないから無効」と言っている裁判官を何人か見ました。要式行為と一緒に考えていたようです。こちらも控訴して勝訴または裁判上の和解で終わっています。
サインはホストクラブの都合で取っているだけです。その目的は客にプレッシャーをかける意味や弁済日の確認としてや間違いなくその日にその客がきたことを後で争点になった場合に証明するためです。(「私は売掛なんて知らないしその店も行ったことない」等と言っている客はたまにいます。)または公示送達(客行方不明の場合でその客が本当に飲みにきて売掛したかどうか?の証明として)での利用です。
サインは、ないよりはあったほうがよいので、売掛するたびに取りましょう!